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今川 裕也; 豊田 晃大; 鬼澤 高志; 加藤 章一
JAEA-Testing 2023-004, 76 Pages, 2024/03
本要領書は、高速炉の高温構造設計技術開発の一環として実施している大気中、アルゴン中及びナトリウム中材料試験の実施方法や得られたデータの整理方法についてとりまとめたものである。本報は、1977年に発行された「FBR金属材料試験実施要領書[PNC TN241 77-03]」および2001年に発行された「FBR金属材料試験実施要領書(改訂版)(マニュアル) [JNC TN9520 2001-001]」に日本産業規格(JIS)における試験法の改訂を反映するとともに、国内学会における材料試験法標準である日本機械学会(JSME)の推奨常温/高温引張試験方法や日本材料学会(JSMS)の高温低サイクル疲労試験法標準も参考にしながら作成した。
敦賀総合研究開発センター
JAEA-Technology 2019-007, 159 Pages, 2019/07
1968年の研究開発着手から約半世紀にわたる高速増殖原型炉もんじゅ(「もんじゅ」)の歴史と技術成果を取りまとめた。高速実験炉「常陽」に続く原型炉として、「もんじゅ」は、半世紀にわたる設計, 建設, 運転, 保守等を通じて、数多くの成果を生んできた。本報告書は、「開発経緯と実績」,「設計と建設」,「試運転」,「原子炉安全」,「炉心技術」,「燃料・材料」,「原子炉設備」,「ナトリウム技術」,「構造・材料」,「運転・保守」,「事故・トラブル経験」の計11章に分けて、特徴や成果を概括している。
山本 正弘; 佐藤 智徳; 小松 篤史; 中野 純一; 上野 文義
Proceedings of European Corrosion Congress 2015 (EUROCORR 2015) (USB Flash Drive), 7 Pages, 2015/09
福島第一原子力発電所では、廃炉に向かう取り組みが進められているが、これは30年もかかる事業である。原子炉の健全性をこの期間中保つためには、一部で使用されている炭素鋼の腐食劣化が大きな課題である。核燃料デブリなどの放射線の影響下での腐食を明らかにするためにCoを用いた線照射下での腐食試験を実施した。試験より、放射線の線量率の上昇に伴い炭素鋼の腐食量が増加し、同様に酸化剤の生成量も増加することが分かった。この結果をもとに、放射線下での炭素鋼の腐食速度予測手法を提案した。
安堂 正己; 若井 栄一; 沢井 友次; 松川 真吾; 内藤 明*; 實川 資朗; 岡 桂一朗*; 田中 典幸*; 大貫 惣明*
JAERI-Review 2004-025, TIARA Annual Report 2003, p.159 - 161, 2004/11
ブランケット構造材料の候補材料である低放射化フェライト鋼では、照射による靭性の低下(延性脆性遷移温度の上昇)が重要な課題となっている。本研究では、低放射化フェライト鋼F82Hに対して、照射硬化が、靭性の低下と大きな関連を有することに着目し、特にヘリウムによる硬化促進及び高照射量での硬化挙動について、TIARAによる多重ビーム照射を用いて調べた。まずヘリウムがない場合における、照射硬化の照射量依存性を調べた結果、633Kにおいては、30dpaまで硬化は増加する傾向にあるが、それ以上の照射量においては飽和傾向を示すことが明らかとなった。さらに同照射温度にて、ヘリウムが照射硬化の促進に及ぼす影響について、ヘリウム注入比を10/100appmとしてそれぞれ比較した結果、1000appmを超えるとわずかな硬化の促進が見られるが、約3300appm(ヘリウム注入条件100appmHe/dpa)の場合においては、20%程度の硬化量の促進が生じることがわかった。
小川 宏明; 山内 有二*; 都筑 和泰; 川島 寿人; 佐藤 正泰; 篠原 孝司; 神谷 健作; 河西 敏; 草間 義紀; 山口 薫*; et al.
Journal of Nuclear Materials, 329-333(Part1), p.678 - 682, 2004/08
被引用回数:4 パーセンタイル:29.26(Materials Science, Multidisciplinary)JFT-2Mでは原型炉の構造材として有力視されている低放射化フェライト鋼(F82H)を段階的に真空容器内に設置して高性能プラズマとの適合性を試験する「先進材料プラズマ適合性試験」を実施している。フェライト鋼はその化学的特性(錆びやすい)から酸素不純物の増加が懸念されている。また、重水素保持特性に関してはこれまで十分なデータの蓄積がない。そこで、フェライト鋼を真空容器内壁の20%に設置した場合と全面に設置した場合の不純物挙動を分光診断で測定した。その結果、真空容器内壁全面に設置した場合であっても、プラズマが直接相互作用をしない位置に設置した場合では、不純物放出が大きな問題とならないことを示す結果を得た。また、フェライト鋼の重水素保持特性では、重水素はおもに酸化層に吸蔵され、機械研摩等により酸化層を除去した状態では、構造材として広く用いられているSUS-316Lと同様であることを示す結果を得た。
芝 清之; 榎枝 幹男; 實川 資朗
Journal of Nuclear Materials, 329-333(Part1), p.243 - 247, 2004/08
被引用回数:53 パーセンタイル:94.45(Materials Science, Multidisciplinary)低放射化フェライト鋼は日本では核融合炉ブランケット構造材の最有力候補として研究開発が進められている。その開発段階の一つとして、日本のITERテストブランケットは低放射化フェライト鋼F82H鋼を使って製作する予定である。ITERテストブランケットは構造材料は280330Cで約3dpaの中性子照射を受けることになる。またITERはパルス運転となるため、照射下での疲労特性も重要な問題である。さらにテストブランケットはHIPにより製造される予定であることからHIP継手の照射特性についても調べる必要がある。F82H鋼に関してはこれまでに多くの照射,非照射データが取得されており、既にデータベースが構築されている。これらのデータベースからF82H鋼のITERテストブランケット構造材としての適合性を検討するとともに今後どのようなデータを整備する必要があるのかについても議論する。
石原 正博
炭素, (208), p.135 - 144, 2003/09
炭素繊維強化炭素複合材料(C/C複合材)は、高い耐熱性から原子力分野において有望な構造材の一つとして考えられている。出口ガス温度が最大約1000となる高温ガス炉では、制御棒被覆管や炉心拘束機構などの高性能炉内構造物への応用が期待されている。さらに、核融合炉では、高温で高中性子照射及び粒子衝突を受けるプラズマ対向機器への応用が期待されている。本稿では、両炉へのC/C複合材の応用についての研究開発の現状を述べるとともに、今後の展望について述べる。
山田 禮司; 井川 直樹; 田口 富嗣; 實川 資朗
Journal of Nuclear Materials, 307-311(Part2), p.1215 - 1220, 2002/12
被引用回数:24 パーセンタイル:80.63(Materials Science, Multidisciplinary)SiC繊維強化SiC/SiC複合材料(SiC/SiC)は、核融合炉の先進的ブランケット構造材料と目されている。構造設計の点から、最大熱応力を設計強度以内に抑えるため、材料には高熱伝導性が要求されている。最近開発された焼結SiC繊維は高熱伝導率を有しており、それを用いたSiC/SiC複合材料もまた高熱伝導性を示すことが期待される。ここでは、CVIとPIP法により焼結SiC繊維を用いて複合化し、それらの熱伝導率を評価した。その結果、CVI及びPIPによる複合材では、室温でそれぞれ、60W/mK,25W/mKの値をえた。これらの値は、非焼結SiC繊維の複合材の熱伝導率と比較すると、非常に大きく開発材料の有望性を示している。焼結及び非焼結SiC繊維のSiC/SiC複合材の熱伝導解析を有限要素法で行い、実験結果を裏付ける計算結果を得た。
安堂 正巳; 谷川 博康; 實川 資朗; 沢井 友次; 加藤 雄大*; 香山 晃*; 中村 和幸; 竹内 浩
Journal of Nuclear Materials, 307-311(Part1), p.260 - 265, 2002/12
被引用回数:39 パーセンタイル:90.08(Materials Science, Multidisciplinary)核融合炉構造材料の第一候補材である低放射化フェライト鋼の開発において、高エネルギー中性子によって生じる照射損傷が材料特性へ及ぼす影響を明らかにすることは最も重要な課題の一つである。しかし現時点では、材料強度特性変化に対するヘリウムの効果については十分に明らかとなっていない。そこで、照射条件を高精度に模擬できる多重イオンビーム照射法,照射面部分の硬さ変化を精密に測定可能な超微小硬さ試験及び押込み変形部の微細組織観察法を組み合わせ、低放射化フェライト鋼に導入した損傷領域の強度特性変化についての評価を行った。まず弾出し損傷を加えた試片について微小硬さ試験を行った結果、特定の照射温度条件において明瞭な硬化が見られた。この硬化つまり変形抵抗増加の原因は、主として微細な欠陥の生成によるものであり、さらに同時照射下でのヘリウムの存在がその変形抵抗に及ぼす影響について報告を行う。
沢井 友次; 若井 栄一; 冨田 健; 内藤 明; 實川 資朗
Journal of Nuclear Materials, 307-311(Part1), p.312 - 316, 2002/12
被引用回数:20 パーセンタイル:76.08(Materials Science, Multidisciplinary)TIG溶接したIEAヒートF82H鋼のスエリング挙動をTIARAによる多重イオン照射を用いて調べた。Fe照射による損傷のピークより浅い領域に、He, Hイオンをデグレーダを通して均一に注入し、FIBによって作成した電子顕微鏡試料を用いてこの部分の観察を行った。照射温度は450で、照射量は50dpaである。TIG溶接の熱影響部には、明瞭な変態線が観察され、これより外側、すなわち溶接熱が焼き戻しに作用した部分でキャビティーの成長が著しかった。一方、母材の熱処理実験の結果、F82HのAc1温度は820程度と判明した。加工熱処理を施した母材に対する結果では、より高温で焼き戻しを行った材料でのキャビティー成長が著しい半面、冷間加工により転位密度を高めた材料では、キャビティーの成長が抑制されることが明らかになった。
沢井 友次; 若井 栄一; 實川 資朗; 菱沼 章道
Journal of Nuclear Materials, 307-311(Part1), p.389 - 392, 2002/12
被引用回数:3 パーセンタイル:23.41(Materials Science, Multidisciplinary)Ti-35Al-10V合金をJRR-3Mで3.510n/cmまで400と600で中性子照射した。本金属間化合物は、粉末冶金から恒温鍛造を経て作製されたものであり、従来の2元系Ti-Al合金には含まれない規則相を含み、延性に優れたものである。引張試験の結果、非照射材は400で約3~15%の破断伸びを示したが、400照射材あるいは600照射材はほとんど塑性変形を示さずに破断した。一方、非照射材は600では60%以上もの破断伸びを示したが、400照射材あるいは600照射材の破断前の塑性変形は極めてわずかであった。これらの引張試験結果、特に低温(400)で照射した材料を600で試験した場合でも延性の低下が著しいことから、準安定な規則相の照射による分解が考えられる。しかしながら電子顕微鏡を用いた電子線回折では、規則相の分解による脆化相、例えば相の形成は認められなかった。
田口 富嗣; 若井 栄一; 井川 直樹; 野上 修平*; Snead, L. L.*; 長谷川 晃*; 實川 資朗
Journal of Nuclear Materials, 307-311(Part2), p.1135 - 1140, 2002/12
被引用回数:17 パーセンタイル:71.47(Materials Science, Multidisciplinary)SiC/SiC複合材料は、低放射化であるという特徴により、核融合炉の構造材料の候補材のひとつである。核融合環境下では、SiC中にHeやHという核変換ガス元素が生成する。これらの核変換ガス元素とはじき出し損傷が、SiC複合材料の組織及び形状安定性に及ぼす重畳効果は、1000以上の高温領域では検討されていない。そこで本研究では、化学両論比がほぼ1である先進SiC繊維(2種類:Hi-Nicalon Type S及びTyranno SA)を用いて、熱傾斜化学蒸着浸透法により作製した2種類のSiC/SiC複合材料の組織及び形状安定性に及ぼす、He,H及びSiの3種類のイオンの同時照射の影響を検討した。その結果、どちらの試料のSiCマトリクスでも、Heバブルが形成されていた。一方、SiC繊維では、Hi-Nicalon Type Sでは、Heバブルは形成されていたが、Tyranno SAでは、形成されていなかった。これは、Tyranno SAには、不純物として2wt%のAlが存在しているため、これが、注入されたHeやキャビティーの移動度を低下させたためと考えられる。また、これまでの材料で問題であった、繊維とマトリクスの界面での剥離は、本試料では観察されなかった。これは、先進SiC繊維の照射に対する優れた形状安定性のためである。
井川 直樹; 田口 富嗣; Snead, L. L.*; 加藤 雄大*; 實川 資朗; 香山 晃*; McLaughlin, J. C.*
Journal of Nuclear Materials, 307-311(Part2), p.1205 - 1209, 2002/12
被引用回数:16 パーセンタイル:69.83(Materials Science, Multidisciplinary)SiC繊維強化SiC複合材料は、低放射化や高温機械特性等に優れているため、次世代の核融合炉用の構造材料の候補材である。近年、高温機械的特性に優れたSiC繊維が開発された。本研究では、この繊維を用い、機械的特性を最適化した複合材料を作製することを目指し、複合化過程の最適化を行った。複合化過程としては最も高純度化が達成できると期待できるFCVI法を採用し、SiC繊維とマトリックスとの間の界面材料としては、低放射化や耐照射性が期待できるカーボン層を用いた。カーボン層の厚みの均一化及び最適化並びにマトリックス中の空孔の低減化及び空孔分布の均一化等によって、優れた機械特性を有するSiC/SiC複合材料が得られる見通しを得た。
辻 宏和; 藤井 英俊*
多変量解析実例ハンドブック, p.107 - 114, 2002/00
原子炉の炉心の近くで使用される構造材料の供用期間中の中性子照射によるクリープ特性の変化という現象には非常に多くの因子が複雑に絡み合っている。このように非常に多くの因子が絡み合う複雑な現象の処理に対して有効な多変量解析手法であるニューラルネットワークにベイズ推定を組み合わせることによって予測結果に統計的意味を持たせ、エラーバーを含めた予測が可能なモデルを構築した。このモデルを用いて、実際の原子炉で使用されている材料が、30年間の稼働後にどのようなクリープ強度特性を有しているかということを予測した。
前田 彰雄; 大場 敏弘; 菊池 博之; 柴田 勝之
JAERI-Tech 2001-003, 48 Pages, 2001/02
アルミニウム合金は、研究炉や試験炉の構造材料として使用実績が高い。しかし、材料強度に関するデータが少なく、研究炉等における構造強度評価のために材料データ特に、溶接の強度データが必要である。そのため、母材と溶接部の諸性質を知る目的として、構造材であるA5052及びA6061について、各種の材料試験が実施された。工作課は、試験に使用する溶接継手板の製作に協力し、JIS-Z3105アルミニウム平板突合わせ溶接部の放射線透過試験の判定基準1類を満足する溶接継手板の製作を目標に、溶接施工法の検討と改良を主眼として技術検討を行った。本報告は、これらの溶接施工の問題点及び欠陥対策について、検討改良を行い、欠陥の極めて少ない溶接施工を行った技術資料としてまとめたものである。
照射管理課*
JNC TN9440 2000-005, 164 Pages, 2000/06
本報告書は、第34サイクルの照射試験終了に伴う運転実績、照射実績、第35サイクルの照射予測等の各種データについて関係者への周知、活用を図ることを目的にまとめたものである。第34サイクルの主な照射試験は以下のとおりである。・日仏交換照射(C4F)・太径燃料ピン照射試験(バンドル照射:C6D)・吸収ピン破損限界照射試験(AMIR-6)・「もんじゅ」被覆管材料等照射(CMIR-5)・実証炉及び大型炉用構造材料の材料強度基準策定への反映(SMIR)・スペクトル効果及び加速照射効果確認試験(UPR-1-5)・「常陽」サーベイランス照射条件の確認(SVIR)・大学連合からの受託照射(SVIR)また、第34サイクルにおける炉心燃料の最高燃焼度はPFD537の68,500MWd/t(要素平均)である。
安彦 兼次; 高木 清一*; 加藤 章一; 永江 勇二; 青砥 紀身; not registered
JNC TN9400 2000-059, 43 Pages, 2000/05
本研究では、現状技術で製作可能な高純度鉄および高純度鉄基合金の材料諸特性を把握し、先進的高速炉の構造材料および機能性材料への適用見通しを得ることを目的とする。そこで、まず10kg程度の高純度鉄及び高純度鉄基合金を超高真空対応のコールドクルーシブル溶解炉を用いて溶製した。次に高速炉の特徴である高温ナトリウム環境と高純度鉄および高純度鉄基合金との共存性、常温および高温における引張特性について検討した。また、高純度鉄基合金の高速炉構造材料に特化された性質の一つである高温クリープ特性を調べるために550におけるクリープ試験を行い、その特性を評価した。さらに、高純度鉄の基本的材料特性である熱膨張係数や比熱、電気比抵抗などを測定し、機械的特性等含めて高速炉構造材料への見通しを評価した。特性試験および評価より以下の結果が得られた。(1)超高真空対応のコールドクルーシブル溶解炉を用いて10kg程度の高純度鉄および高純度50%Cr-Fe合金を溶製することができた。(2)常温および高温における変形挙動を理解するために高純度50%Cr‐Fe合金の引張試験を行った。その結果、高純度50%Cr-Fe合金は高温においても高強度でかつ延性を有していることがわかった。(3)高純度50%Cr-Fe合金の物理的特性(熱膨張係数や比熱等)を測定した。高純度50%Cr-Fe合金の熱膨張係数はSUS304よりも小さく、高速炉構造材料として有望であることがわかった。(4)ナトリウム腐食試験の結果、普通純度鉄は重量減少を示したが、高純度鉄は重量増加を示した。また、普通純度鉄は粒界近傍に著しい腐食が生じていたが、高純度鉄は粒界にも腐食は生じていなかった。(5)高純度50%Cr-Fe合金の550でのクリープ試験を実施した。その結果、短時間側で高純度50%Cr-Fe合金のクリープ破断強さは改良9Cr-1Mo鋼よりも高強度であるが、長時間側では同程度の強度であった。一方、クリープ破断伸びおよび絞りは改良9Cr-1Mo鋼より若干低下した。
門馬 義雄*; 山崎 政義*; 永江 勇二; 加藤 章一; 長谷部 慎一; 青砥 紀身
JNC TN9400 2000-044, 22 Pages, 2000/03
高速炉プラントの新構造材料および寿命診断技術の開発では、従来強度評価の補強資料として定性的理解のみに用いられてきた材料組織の微視的観察結果とその分析データを定量的に把握し、組織変化が材料特性におよぼす効果あるいは相関性を評価する手法の確立が必要である。特に炉心構造健全性を保証するために、溶接継手部における高温長時間強度特性と組織変化の関係を明らかにする技術開発のニーズが高い。このため、高速炉容器の溶接金属について、クリープによる組織の経時変化を定量化する技術に取り組んだ。本研究では、まず高速炉容器用に開発された316FR鋼を母材として、16Cr-8Ni-2Moおよび共金系(18Cr-12Ni-Mo)の溶接金属のクリープ試験を823および873Kで行い、37,000hまでのクリープ破断データを取得することにより、そのクリープ特性を明らかにした。さらにクリープ破断した試験片平行部の組織観察を行い、析出物の面積を定量化し、その経時変化とクリープ損傷の対応についての検討を行った。溶接金属のクリープ強度は高応力短時間側で16Cr-8Ni-2Mo系が共金系よりも小さいが、低応力長時間側では16Cr-8Ni-2Mo系と共金系のクリープ強度が同等になる傾向がみられた。また、クリープ破断延性は16Cr-8Ni-2Moの方が共金系よりも優れていることがわかった。さらに、溶接金属の823Kでの低応力長時間および873Kではフェライト中に析出した相界面に発生する割れがクリープ破壊の起点となることを明らかにした。16Cr-8Ni-2Mo系溶接金属の析出量はいずれの温度時間においても共金系溶接金属よりも少ない。析出物の変化はマグネゲージで測定した残留フェライト量の変化と良く対応しており、フェライト量が時間の経過と共に減少するのに伴い、析出量は増加することを明らかにした。16Cr-8Ni-2Mo系溶接金属のクリープ破断材平行部の析出量とクリープ破断時間(対数)との関係をLarson-Millerパラメータ(LMP)で整理すると、1次式で表すことができ、この式から16Cr-8Ni-2Mo系溶接金属の析出量の予測が可能になった。
小田 知正*; 廣畑 優子*; 日野 友明*; 仙石 盛夫
真空, 43(3), p.325 - 328, 2000/03
将来の核融合炉構造材料の候補材であるバナジウム合金の水素捕捉について調べ、その捕捉量とTi-O酸化層との関係を明らかにした。JFT-2Mトカマク環境下に置いた試料には約200nmの酸化層が形成され水素捕捉が約2ppmと小さいが、同様の現象が人為的に酸化させた場合も観測された。この場合の酸化層の厚さは、酸化時の試料温度を100,300,450と変えた場合それぞれ240,460,30nmと異なり、それぞれの厚さに対して水素捕捉量を調べた結果160nm以上の酸化層が形成された場合捕捉が抑制され、実機での結果と矛盾しないことがわかった。このことは、水素脆化低減策の検討のうえで重要な情報となる。
本間 信之*; 千葉 恭彦*; 棚井 憲治
JNC TN8400 99-048, 85 Pages, 1999/11
本報は、高レベル放射性廃棄物の地層処分における、人工バリアを構成する要素の一つであるオーバーパックについて、構造強度層に炭素鋼を、耐食層にチタンを用いたチタン-炭素鋼複合オーバーパックの、現有技術での製作可能性を確認するために、その設計および実規模大での試作を行った結果を報告するものである。設計に当たっては、一般の原子力施設に適用される基準により必要な耐圧厚さを計算した。また有限要素法による解析を実施して、結果の妥当性を確認した。また、オーバーパック内部に収納するガラス固化体から発せられる放射線の遮へいについて計算し、オーバーパック遮へい機能の必要性を検討した。結果、オーバーパックには輸送基準を満足するために必要な遮へい機能は与えず、別途搬送用機器等で遮へいする方式が合理的であることを示した。以上の検討をもとに実規模大での複合オーバーパックの試作を行った。耐食層の材質については、超長期の耐腐食性が期待できるチタン材のうちASTMGrade-2材を選択した。チタン耐食層の施工は、オーバーパック円筒部と平面部に分けて実施した。円筒部については内層である炭素鋼容器に円筒形に成形したチタンの外層を焼きばめ挿入する方式を採用した。また蓋部、底部などの平面部については、チタン板材の爆発圧着法による被覆方法を採用した。本体と蓋の封入溶接については、電子ビーム溶接とMAG溶接とを組み合わせて実施した。いずれの工程においても不具合等は確認されず、チタン-炭素鋼複合オーバーパックの現有技術での製作可能性が確認できた。最後に今回の試作結果をふまえ今後検討されるべき課題をまとめた。